ダイバーシティ&インクルージョン実現に向けたトップメッセージ
2050年からバックキャストして
描きました 「2030年のありたい姿」、
その実現へ向け、過去の打ち手の成果を
踏まえたフォアキャストとの組み合わせによって
策定しました 「22中計」。
その最初の年度を終えました。
2022年度を初年度とする新たな3か年度の中期経営計画 「22中計」 が、昨年4月よりスタートいたしました。
事業環境が絶えず大きく変化し続ける中、昨2022年度も変化の波に抗いながら、捉えながら何とか乗り切ることができたというのが、率直な振返りです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響は世界的に徐々に収束へと向かいつつあるものの、長期化するウクライナ情勢、顕在化した地政学リスクからの原材料価格やエネルギーコストの上昇、中国の景気減速、為替相場や金属価格の変動等、引続き厳しい経営環境でありました。
昨年度の当社グループの各事業部門の状況を申し上げますと、主力製品のひとつであります電解銅箔は、半導体向けを中心にサプライチェーン全体での在庫調整が長引いており、販売量が減少。各種機能粉も、主要顧客の生産調整、スマートフォン向け需要低迷の影響を受け、機能材料部門全体で前年度比、減収減益となりました。
金属部門では、LME相場は下降基調で推移しましたが、円安の影響により国内価格は保たれる結果となり、同部門全体の売上は幾分の増収となりました。利益面では、エネルギーコストの上昇、非鉄金属相場の変動に伴います在庫要因の影響があり、減益となっています。
世界の自動車販売台数は、半導体をはじめとする部材の供給不足が徐々に解消されたことから微増となりました。当社モビリティ部門の主要製品である自動車部品ドアラッチは、中国の需要低迷を、国内、インドおよび東南アジア向けの需要が補い、加えて原材料コスト上昇の一部を販価に反映できましたことから増収となりました。
二輪車向け排ガス浄化触媒は、インドおよび東南アジア向け需要が堅調、四輪車向け排ガス浄化触媒は、インド向け新規受注車種の量産を開始したことから増販となり、触媒事業も増収となりました。
これらのことからモビリティ部門全体でも増収、利益の面においても、触媒の増販が寄与、触媒の主要原料であるロジウム価格等の変動に伴う影響が改善したことにより、前年度比で増益となっています。
昨2022年度、当社グループ全体では、機能材料部門の減収をほか部門で補い、売上高は前年度に比べて186億円(2.9%)増加の6,519億円、営業利益は、円安の進行による好転要因があったものの機能材料部門の減収減益に加え、エネルギーコストの上昇や非鉄金属相場の変動に伴う在庫要因の影響を受け、482億円(79.4%)減少の125億円となりました。経常利益は、持分法による投資利益11億円の増加がありましたが、営業利益の減少が大きく、461億円(69.9%)減少の198億円です。特別損益において固定資産除却損や関係会社株式評価損等を計上しました結果、当期純利益は、前年度に比べて435億円(83.7%)減少の85億円という結果です。
不確実な経営環境を言い訳とすることはできません。経営トップとして、コミットしました期初の計画値に対し、売上、利益とも未達でありましたことに責任を強く感じております。「22中計」 の2年目となる当2023年度も、損益面、各財務指標において原計画値を下回る見込みの厳しい経営環境ではありますが、全社ビジョン実現に向けた戦略を変えることなく、それぞれの打ち手をしっかりと実行していきます。
機能材料部門では、「統合思考経営」 の中の経済的価値実現に向けた事業機会拡大による成長加速とその仕組みづくり、社会的価値創造に向けた環境貢献製品の創出、CO2排出量削減の加速といった戦略の追加や、経営資源配分の最適化による資産効率向上を進めていきます。金属部門では、サーキュラーエコノミー、持続可能な社会の実現へ向け、そのために不可欠とされる存在になるためのリサイクルネットワークの確立、新たな金属資源、再生可能エネルギー資源の開発の検討、銅・貴金属採収率の改善や副産物の増回収に引続き取り組んでまいります。モビリティ部門では、お客様企業から、市場から選ばれる価値を見極め、その価値を創り続けるモビリティ社会の開拓者となるべく、技製販全てにおける深化とともに、新たな製品・事業の創出を推し進めていきます。研究開発と市場共創を担っています事業創造本部では、新たな事業の持続的な創造を叶えるべく、事業機会の探索力、研究開発力の強化を図り、事業化推進のフェーズにある開発テーマについては環境の変化に応じてタイムリーに投資と人員の投入を実行していきます。
経済的価値と社会的価値、
その両方を創出するための改革、
歩みは止めません。
コーポレート部門においては、統合思考経営の中の 「社会的価値の向上」 の取組みをさらに加速させるべく、事業部門を含めた関係各部門との連携促進のために、今年4月サステナビリティ推進部を経営企画本部から社長直下に移管いたしました。
また、技術系の4部門である生産技術部、品質保証部、保安環境部、知的財産部では、GX*1、DX*2といった変革を遂げるために、それぞれに技術基盤の強化や人材育成に取り組んでおりますが、協働して取り組むことでシナジーを創出しその成果を最大化するため、同じく今年4月にこれら4部門を統括する 「技術本部」 を新設いたしました。カーボンニュートラルの実現、環境貢献製品の創出、環境課題の解決、さらには知的資本、技術的資本、人的資本の強化にもつなげていくものです。
*1 GX (グリーントランスフォーメーション)
気候変動の主な要因となっている温室効果ガスの排出量を削減しようという世界の流れを経済成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力向上の両立を目指す取組みのこと。
*2
DX (デジタルトランスフォーメーション)デジタルテクノロジーを駆使して、経営の在り方やビジネスプロセスを再構築すること。
「経済的価値の向上」 と 「社会的価値の向上」 の両立による統合思考経営を推し進めるために、最も重要な経営資源である人的資本の価値を最大化することにも努めています。
ダイバーシティ&インクルージョンの取組みを深化・加速させるために、専任組織であるダイバーシティ推進室を一昨年に設置し、多様な価値観を持つ全ての従業員が活躍できる職場づくりを実現するための計画を策定、実行しています。
具体的には、中期経営計画における重点取組み項目である 「働きがい改革」 と、多様性を高めて活かす取組みの第一歩として 「女性活躍」 を推進し、多様な人を惹きつける職場の実現を目指しています。また、私を委員長とするダイバーシティ推進委員会を昨年4月に立ち上げ、委員会で方針・施策を定期的に協議・決定し、実行状況を管理し、そして課題や委員会での取組み進捗について取締役会への報告事項とすることで、経営方針に沿ったダイバーシティ&インクルージョンの推進、施策の浸透と定着を図っていきます。
当社グループで働く全ての従業員とその家族が心身ともに健康であることも、重要な経営課題であると認識しています。
これら皆さんが健康であることは、それぞれの生活を充実させ、その個性と能力を最大限に発揮できる基盤となり、会社にとっても生産性を高め、イノベーション創出のためにも欠かせない前提と考えています。健康経営にも積極的に取り組んでいきます。
事業成長と戦略の実行を人材・組織の面から支える機能として、同じく昨年4月に人事ビジネスパートナー室を設けました。
事業を継続的、持続的に成長させていくために、経営戦略と人事マネジメントの連動を図るためのものです。
具体的には、全社的な体制として各本部にHRBP*3担当者を配置し、人事部と連携する形を整えました。全社視点における事業ポートフォリオの動的管理に紐づく人材アロケーションの実行など、先見性のある人事課題を特定し、課題解決のための施策をスピーディに展開していくとともに、サクセッションプランや個人別の配置育成計画により各部門でのタレントマネジメントを支援していきます。
また、これらの取組みを進めるとともに、昨年度より、これまでの ヒト基準の人事制度から、職務・役割基準の「ジョブ型人事制度」 へと改定し、実力重視の適材適所の配置を図っております。
*3 HRBP (Human Resource Business Partner)経営者や事業部門のパートナーとして事業成長と戦略の実行を人材・組織の面から支える機能。
「2030年のありたい姿」の実現、
それはすべてのステークホルダーの
“well-being”へとつながること。
当社グループの企業価値の持続的な向上のためのインセンティブを経営層に与えるとともに、株主の皆様との一層の価値共有を進めることを目的として、取締役の報酬制度にESG指標を今年度より導入いたしました。
具体的なESG指標といたしましては、温室効果ガスの削減、働きがい・ダイバーシティの推進、およびコンプライアンスに関するものであり、これらESG指標の達成度合いに応じて付与される 「ESG指標要件型譲渡制限付株式報酬」 を加えております。
現在の中計のスタートとともに、「両利きの経営」 も進めていきますことを昨年お伝えいたしました。
「知の探索」 を担います事業創造本部につきましては、前に述べましたとおり、引続き積極的に経営資源を投入していきます。
そしてもう一方の 「知の深化」 においては、事業ポートフォリオの動的管理を継続するとともに、価値の拡大・価値の育成の事業では計画的な投資を続け、価値の再構築事業では社内外のベストオーナーの探索を引続き進めていきます。
不確実な時代、舵取りの難しい環境がまだまだ続きますが、昨年に描きました 「2030年のありたい姿
*4」 や「2030年度の業績目標」 を変えるつもりはありません。それが達成できなければ、2050年の私たち三井金属グループは在り得ない、という覚悟です。
そのためにも、「22中計」 の最終年度となります2024年、当社創業150周年という節目を、ステークホルダー皆様とともに、充実感と晴れやかな気持ちで迎えたいと思っております。
パーパス 【 探索精神と多様な技術の融合で、地球を笑顔にする。】 を基とした 2030年のありたい姿の実現へ、経営トップとして、引続き情報を積極的に発信し、社内外のステークホルダーの皆様とのコミュニケーションも進めていきます。
今後とも、より一層のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
*4 2030年のありたい姿マテリアルの知恵で“未来”に貢献する、事業創発カンパニー。