気候変動への対応
三井金属グループは気候変動を最も重要な環境課題の一つと捉えています。気候変動とそれを巡る社会や経済の変化は、事業上のリスクをもたらしますが、適切に対応することによって競争力の強化や新たな事業機会の獲得にもつながると認識しています。当社グループはTCFD提言のフレームワークに則って、気候変動がもたらす中長期的なリスクと機会の分析、および事業戦略に落とし込む活動を開始しました。2022年3月、TCFD提言への賛同を表明いたしました。
2020年度、環境省の「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」に参加し、売上高が全体の約30%、CO2排出量が全体の約60%を占める金属事業についてシナリオ分析を行ないました。2021年度は、金属事業の次にCO2排出量が多い銅箔事業、および内燃機関搭載自動車向け排気ガス浄化触媒を提供する触媒事業について、TCFDシナリオ分析を実施しました。そして、2022年度、機能性粉体事業、薄膜材料事業、セラミックス事業と日本イットリウム(株)についてシナリオ分析を完了しています。現在、同分析を他事業で実施しており、分析した結果を順次開示していきます。
統合報告書2024 安全衛生/環境課題への取組み/TCFDに基づく気候関連情報の開示(1,629KB)
カーボンニュートラルの取組み
三井金属グループは、非鉄製錬、電解銅箔などエネルギー多消費型事業を有しており、事業活動に伴う温室効果ガス(以下、GHG)の排出が、気候変動に与える影響を認識しています。この気候変動への影響を低減するために、徹底した省エネルギー活動、再生可能エネルギーの導入拡大などGHG排出の削減に努めています。
2022年3月、エネルギー起源CO2排出量削減目標を改定し公表しました。2013年度比2030年度までに、CO2排出量をグローバル連結ベースで38%削減し、また長期的には、2050年度までにカーボンニュートラル(Net 排出ゼロ)を目指します。
脱炭素社会の実現に向けた中長期 CO2排出量削減目標について
2023年12月、2030年度までのCO2排出量の削減と2050年度までのカーボンニュートラルの実現に向け、三井金属グループのトランジション戦略を策定しました。
カーボンニュートラルに向けたトランジション戦略の策定について
CO2・エネルギーデータ
ESGデータ 環境 CO2・エネルギー
CO2削減にも貢献する非鉄金属素材
亜鉛
■ 亜鉛めっきの特徴と利点
溶融亜鉛めっきは高温で溶かした亜鉛に鋼材を浸し、鋼材表面に 「亜鉛-鉄合金皮膜」 を形成する技術です。
その優れた耐食性によって、自動車や建材を中心に、各産業を支える基礎素材として広く用いられています。
① 亜鉛めっきの特徴
・亜鉛めっき加工を施した鋼材は、長期にわたって錆びや腐食が発生しません。亜鉛と鉄が強く金属結合した 「合金層」 のバリアー機能によって、長い年月を経ても安定して鋼材表面を保護します。
・水分や酸素、塩分等の侵入を防ぎ、コンクリートの中性化の影響も少なく長寿命化に貢献しています。
② 亜鉛めっきの利点
・犠牲防食作用により幅広い環境下であっても耐食性が維持できます。
・どのようなサイズ、形の鋼材であっても施工が可能です。
湿度が高く海に囲まれる日本において、社会資本のベースとなっている 「鉄」 を 『錆びない・腐食しない・環境と調和する』 新たな素材へと生まれ変わらせる 「亜鉛めっき」 は、
鋼材の長寿命化と循環型社会に貢献する優れた加工技術なのです。
[参照] 日本溶融亜鉛鍍金協会HP
■ 亜鉛めっきのCO2削減への効果
亜鉛によるCO
2削減への貢献量は
2,700万t₋CO
2/年。
銅
■ 社会的な重要性が増す銅製品
脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーや電気自動車の導入が世の中で加速しています。
脱炭素を進めるそれらの設備、機器には、銅が多く用いられており、とくに電気自動車では、配線、バッテリーやモーターなどに、銅は欠かせない素材となっています。
カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に必要な鉱物資源
<再生可能エネルギー部門>
システム・要素技術 |
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必要となる主な鉱物資源 |
発電・蓄電池 |
風力発電 |
銅、アルミ、レアアース |
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太陽光発電 |
インジウム、ガリウム、セレン、銅 |
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地熱発電 |
チタン |
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大容量蓄電池 |
バナジウム、リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン、銅 |
<自動車部門>
システム・要素技術 |
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必要となる主な鉱物資源 |
蓄電池・モーター等 |
リチウムイオン電池 |
リチウム、コバルト、ニッケル、マンガン、銅 |
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全固体電池 |
リチウム、ニッケル、マンガン、銅 |
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高性能磁石 |
レアアース |
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燃料電池 |
プラチナ、ニッケル、レアアース |
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水素タンク |
チタン、ニオブ、亜鉛、マグネシウム、バナジウム |
[参照]・ JOGMEC 「JOGMEC NEWS」 2021MARCHvol64 ・ 経済産業省 「2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた鉱物資源政策」
自動車 1台当たりの電気銅使用量
ガソリン車 23㎏ 電気自動車 83㎏ 約4倍
■ 三井金属の電気銅のCO2削減貢献量シミュレーション
2030年までに、仮に日本国内の自動車がすべて電気自動車に置き換わった場合、CO2削減量は 1,647万t/年 (累計 1.4億t) が見込まれています。
うち、当社三井金属の電気銅は、27万t-CO2/年 の削減に貢献できるものと見込んでいます。
自動車によるCO2排出量 (億t/年、日本国内)
[前提]・ 国内自動車保有台数は78百万台(2019年度)と変わらない。・2030年頃 (2020年+8.5年) までに全てEV系へ置き換わると設定。
[参照]・ 経済産業省 自動車新時代戦略会議 中間整理 平成30年8月31日 ・国土交通省 運輸部門における二酸化炭素排出量 2021年4月27日
金属事業|製品・サービス紹介
省エネルギーの取組み
三井金属グループでは、省エネルギー活動を推進するグループ横断組織として、取締役兼環境および安全衛生最高責任者を委員長とする省エネ推進委員会を設置しています。省エネ推進委員会ではCSR委員会と連携し、中長期目標の達成に向け、エネルギー使用量削減のための取組みや再生可能エネルギーの創出拡大を推進しています。また、前年度の実績を踏まえて取組み方針を適宜見直し、各拠点へ展開しています。各拠点では、省エネ委員会が定める方針の下、各工程の操業改善、最新の高効率機器の導入、より低炭素な燃料への転換、LED照明の導入などを推進しています。
2020年4月より、三井金属グループのエネルギー専任組織として、本社生産技術部にエネルギー担当を新設しました。エネルギー担当はエネルギーに特化した視点で、各拠点の省エネルギー案件の発掘、拠点の取組みにおける技術面での精査やサポート、削減効果の検証を行なっています。
竹原製錬所の省エネ活動。プロセスコンピューター上でコークス比率をリアルタイムで見える化し、刻一刻と変化する炉内の状況を全員で分析、コークス投入量を最適化し、使用量を削減。
再生可能エネルギーの拡大
三井金属グループは再生可能エネルギー比率の向上に向け、水力、太陽光や地熱など既存の発電設備の安定稼働とともに、新規導入の拡大を進めています。
神岡鉱業(株)では約100年前から水力発電所の操業をしていますが、所有する10か所のうち5か所の水力発電所の更新工事を2018年度に完了し、2019年度より最新鋭設備で再稼働しました。また、彦島製錬(株)をはじめ、国内と海外の複数拠点で太陽光発電設備を導入しており、さらなる拡大を検討しています。
現在、再生可能エネルギーの新規導入を推進するために、省エネ委員会の方針に従い、本社生産技術部エネルギー担当が各拠点と情報を共有し、導入に向けての実地調査などに取り組んでいます。
神岡鉱業株式会社 金木戸発電所
奥会津地熱株式会社
彦島製錬株式会社 太陽光発電所
物流における取組み(スコープ3)
当社グループは原材料や製品の輸送にかかるエネルギー使用量の削減にも努めています。具体的には、積載率の向上、輸送ルートの短縮、モーダルシフトの推進を行なっています。また、お客様やサプライヤーとのご理解のもと、納入時の形態や頻度について検討するなどの活動を推進しています。
環境貢献製品の取組み
当社グループは、自社工程を含む社会全体のカーボンニュートラル達成や循環型社会の実現など、環境負荷低減に向けた取り組みに貢献する製品の創出や事業展開が、社会からの要請に応えるために不可欠と認識しております。それに従い、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment /LCA )の観点で製品のライフサイクルの各ステージにおける環境影響を評価し、環境負荷低減や社会的課題の緩和につながる製品を 「環境貢献製品」 と定義し、2020年度に環境貢献製品認定制度の運用を開始しています。
インターナルカーボンプライシング(Internal Carbon Pricing/ICP)制度の導入
当社グループは中長期CO2削減目標の達成に向けて、取組みを加速させるために、2023年4月1日よりインターナルカーボンプライシング制度を導入します。
インターナルカーボンプライシング制度の導入について
サプライヤーとの協働
当社グループの調達方針は気候変動対応も含む環境項目や社会項目から構成されています。一次サプライヤーに対しては、調達方針の実行および自社のサプライヤーの管理を要請しています。さらに重要なサプライヤーに対しては、気候変動を組入れる環境リスクを含めた総合的リスク評価によって抽出された、サプライヤーSAQ(自己評価アンケート)を実施しています。SAQの実施によって調達方針の実行状況を調査し、結果をフィードバックしています。またリスクが高い項目について、リスク低減のためのエンゲージメントを実施しています。
サプライチェーン
GXリーグへの参画
「GXリーグ」は、日本政府が主導しているGX推進のためのイニシアティブで、2023年度から本格的に活動しています。企業が、行政や大学・公的研究機関、金融機関などと連携して、経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行なっています。
当社はGXリーグへの参画を通して、官民学一体となった活動により、中長期CO2排出量削減目標の達成に向けて、バリューチェーン上のステークホルダーとの協働や、グリーン市場への参画などの取組みを進めていきます。
イノベーション・パートナーとの連携
当社グループは2020年に経団連のチャレンジゼロに賛同し、4つのテーマを具体的に掲げ参加しています。保有する技術を活かし、チャレンジゼロの取組みを通じて多様なパートナーとの連携も模索しています。
チャレンジ・ゼロ
外部団体での取組み
日本鉱業協会
当社は非鉄金属の鉱業・製錬業の団体である日本鉱業協会(Japan Mining Industry Association/JMIA)のメンバーです。日本鉱業協会では、2050年日本のカーボンニュートラル実現に向けて取り組んで行くべき対策として、リサイクル処理原料拡大に向けた対策、中長期の革新的技術課題への対策など5つの対策領域を掲げています。また、日本政府に対して、関連政策の整備など、今後の政策の進展を要望しています。当社は協会の方針に従い、メンバーの各社と情報共有して、取組みを推進していきます。
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)
2024年11月、 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)に加盟しました。JCLPは「気候危機の克服に向け、1.5℃⽬標を確実に達成すべく、速やかに脱炭素社会へ移行する」ことを目指しています。当社は加盟により、パリ協定と整合する脱炭素化社会の実現を後押しする意思と行動を社会に示し、自社の脱炭素化の実践を通じて、国際的及び地域の持続可能な発展に寄与してまいります。
「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」加盟について [450KB]
日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)